Vol.1 「働くカタチは、ひとつじゃない―」
障害者雇用に対する意識の高まりや政策の浸透などで、昨年(09年)度、民間企業等に就職した障害のある人は約4万5,000人と、10年前の約2倍に増加しています。しかし、障害のある人の有効求職者数は15万人を超えているという事実も一方で存在します。職業訓練を受講中などの事情もあり、求職登録をしている人たちの全てが今すぐに職に就くことを望んでいるわけではないと言われていますが、おそらくそれだけではないでしょう。障害や疾病を抱えながらの労働スタイルが、現在の「雇用」の形に根本的にそぐわない状況が相当数あるのではないかと思います。
「雇用」にそぐわない理由には、障害の程度や就労可能時間の問題、求人企業が求める条件とのアンマッチなどさまざまにあると思いますが、そもそもの話として、就職することだけが働くスタイルではない、という当然の事情もあるのではないでしょうか。日常生活に特段の制限のある方々が、皆揃ってサラリーマンになることを目指しているはずがありません。フリーランスとして自由度の高い働き方を希望する人もいれば、グループで1つの仕事遂行を理想とする人、福祉施設等で生活支援やリハビリを受けながら働きたい人、また、たとえ1日1時間、あるいは週に数時間であってもベッドから起きて仕事をしたいと願う人。そうした幅の広さを考えると、週に最低でも20時間以上の労働を求める「雇用」という就労形態だけでは、充分な選択肢と言えないことは明らかです。
本稿のタイトル「働くカタチは、ひとつじゃない―」は、2007年秋、東京コロニーで発行した小冊子「Partners(パートナーズ)」のキャッチコピーとして、その思いを凝縮したものです。雇用以外の働く選択肢のひとつとしてSOHO/請負スタイルを広く知っていただくため、私たちes-teamのように在宅就業をしている人やグループ、支援団体、そしてクライアントにスポットをあて、自分たちの足で全国をまわって制作しました。翌2008年度には第2弾として、支援団体の運営ノウハウや実績、在宅ワーカー本人たちの声を集約した「在宅就業支援ガイドブック~Partners2~」もできあがりました。
そこから3年、在宅就業を希望する人および支援団体の数や成果は、ネットの情報などを見る限り徐々に増えているようです。が、同時に、新たな課題、見直すべきことも見えてきたように思われます。さて、それはどのようなことなのか。私たちなりの視線で整理をして、次回から「つぶやいて」みたいと思います。
(吉田 岳史/東京都葛飾福祉工場・SOHOコーディネータ)