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小説「ハンチバック」を読んで

2024年10月04日  中村 発

「この小説は、復讐をするつもりで書きました――」

去年の芥川賞の授賞式で、チェ・ゲバラ風のベレー帽姿で車いすに乗って金屏風の前に現れ、いきなり日本の出版業界や文壇に物申し始めた大柄な彼女を見て、「なんだかえらく威勢のいい姉ちゃんが出てきたな」と感じて「この作品は絶対読まねば」と思いつつ早一年、先日ようやく読んだので感想をば。

しょっぱなから驚きの連続だった。何たって、
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で始まるのだから。「<meta>がないぞ」とか「ここは<div>より<p>のほうがいいのでは?」と職業病が発動しかけましたが、タグに囲まれた本文の内容がぶっ飛んでいてそんなことは気にしていられない。

今のes-teamには未成年のメンバーはいないはずだけど、いたとしたらとりあえず慌ててその両目を覆いたくなるようなエロワードが、「何か問題でも?」みたいな平然とした顔で並んでいる。同時に、難しい言葉や若者界隈の言葉、身体障害を巡る自分が知らなかった事件の話も出てくるので調べながら読む(たしかに、電子書籍だったらこういう時すぐ調べられていいよねと思いながら)。

著者と同じ病気「先天性ミオパチー」を患っている重度の障害者が主人公で。
呼吸、発話、痰の吸引、姿勢を保つこと…の難しさの話が出て来るたびに「あーこれは大変だ。」と思うのだけど、最後の「だ。」を思い終わる直前に高速で飛んで来るピンクのハリセンに横っ面を張られる感じ。

全編に渡って社会に対する理屈っぽい憎まれ口、皮肉、毒づき、悪口、そして性的な鬱屈の描写のオンパレードで、こちらは刃を突きつけられているようでヒリヒリするのだが、全体に、「ムカつきすぎて笑っちゃうんですけど自分。」みたいな毅然としたユーモアが漂っていて、何というか少し「愉快」なヒリヒリだ。ちょっと自信のなさというか控えめな感じもあって「痛快」とは微妙に違うのだが。

全体の感想を一言で言うとしたら「最初から最後まで大いに戸惑った」でしょうか。
彼女が物申した業界の人達も少しは戸惑ったと思うし、そこを含むこの社会全体がいい方向に変わって行けたらいいです。障害の有無・軽重にかかわらず未読の方はぜひ。ふりかけ大事。

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本の表紙の写真

ちなみに自分が読んだのは著者インタビューや 選者の評も載っているこちら↓↓
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■冒頭の金屏風シーン

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